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初恋は期間限定 36

2012年02月09日 00:00

その時祖父は、嬉しそうに笑っていたように思える。自分の体調が最悪だったせいであまりはっきりとは覚えていないが、確かに笑っていると思ったのだ。


……いつからだろう。祖父の笑顔を見なくなったのは。
いつだっただろう。俺が医師という一本道に疑問を持ち始めたのは。
そもそも、俺はいつから祖父の顔を見なくなったんだろう。笑っているかどうか分からない、それは祖父の顔をちゃんと見なくなったせいではないか?
家の中で、見えない圧力の中、息苦しくもがくようになったのは、一体いつだったか。
分からない。俺にはもう分からない。


いつからか、俺は家族と自分との間に壁を作ってしまった。それは自分を守るための壁だと、当時俺は信じていた。
でも、違ったのかもしれない。俺は結果的に自分の首を絞めたのかもしれない。
医者に向いていないという自覚は確かにあった。でも、もっと違う伝え方があったのかもしれない。
だが今となってはそれも「たら、れば」の話であって、今や俺が家族との間に作った壁はさらに強固なものになってしまった。壊すのは容易でないところまで来てしまった。
この状態で、俺が家族に、祖父に会いに行ったら、どんな顔をされるのだろう。
知りたい。でも、知るのは恐ろしい。


和室の部屋が暗転する。祖父の姿も、何もかもが消え、俺は真っ暗闇の中を落ちていくような感覚に襲われた。無力な人形のように、闇の中を落ちていく。
止まらなければ。そう思って俺は虚空に手を伸ばす。だが、俺の手は虚しく空を掴んだだけだった。
もう一度、空を引っ掻くように腕を伸ばす。やはり何も掴めない。……もとより、掴まるものなんて何もないのかもしれない。
だが3度目にして、俺はようやく何かを握った。そのあまりにリアルな感触に、俺ははっと目を開ける。


俺は、院長自宅の和室で天井を見上げていた。もう俺は落下してなどいないし、もちろん祖父の姿などどこにもない。いつの間にか眠ってしまったようだ。
だが夢と気付いた後でも、手のひらの中の感触だけは未だに残っている。感触が残っているというか、俺は実際になにかを握っている。
その事実に気づいた俺は、「なにか」を確認すべく横を向き――何者かと至近距離で目があって思わず飛び起きそうになった。


何かいる!俺今、なんか生き物握ってるぞ!


得体の知れないものから手を引こうとすると、逆にその手を掴まれた。……人間の手だ。
もしかして起こしに来てくれた誰かの手を握ってしまったのだろうかと思い、俺は慌てて謝った。
「すっ、すみません!俺、寝ぼけてて……」
言いながら顔を上げて、直後、口を閉じる。最近嫌というほど見た、白い耳が目に入ったからだ。


なんだよ、驚かせるなよ……。俺が掴んでいたのは、銀二の腕だったのだ。
「……っていうか、なんでお前ここにいるんだよ」
最初に頭に浮かんだ疑問を率直にぶつけたが、銀二はそれには答えない。
銀二は質問に答える代わりに俺のそばに身を寄せると、指先で俺の目元をそっと撫でた。それで自分の頬が濡れていることに初めて気が付く。





銀二、いきなりの登場ですが、ちゃんと理由があってここへ来ています。夢の延長などではありません(笑)


昨日は小説更新が無かったはずなのですが、何故かポチの数が多くて「???」でした。何かあったのかな……?
あ、でも、本当に嬉しいです!(*´∀`*)ポチくださった方、ありがとうございました!m(__)m
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☆拍手コメお返事
ますみ様
ほのぼのな夢に浸っていたはずが、それが引き金でかなりぐるぐるしています(;´∀`)
ちゃんと元気になれるでしょうか?
ますみ様は、あんまり嫌なことは気にしないタイプなんですね(*´∀`*)私もどちらかといえば楽観的な方、なのかな……?悩むと疲れるので、考えるのを放棄しちゃう感じです(笑)
直樹君も、もうちょっと楽観的になった方が、きっと気が楽になるでしょうに(笑)


そうですよね、本の整理ってなかなか難しいです。
整理しないままどんどん積み重なってさらに整理が面倒になって……あああ、もう、悪循環です~!(;´Д`)

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櫻庭ちひろ

Author:櫻庭ちひろ
こちらではオリジナルBL小説を扱っております。BLに興味のない方は閲覧を控えてください。また、著作権は放棄していません。
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